一人水族館のススメ

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聖地巡礼を目的とした水族館の客層についての考察

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水族館とアニメ

きっかけ

最近は外出自粛でなかなか水族館に行くことはできません。

せっかくの機会なので、今までの水族館データを整理したり、YouTubeへの動画投稿を本格的に始めたり、ブログを始めてみたりと、様々なことをして時間を潰してきたのですが、一日中部屋にいて水族館のことだけをやっていると、流石に嫌になってきてしまいました。

そこで、気分転換に何かしようと思った時に、ちょうどテレビで「名探偵コナン」の劇場版が放送されていました。

コナンって個人的にはあまり進んで見たいと思うものではなかったのですが、なんと舞台が水族館らしいじゃないですか。東都水族館という架空の水族館ではありますが、普段見ないこともあってウキウキで見たわけです。

結局、思ったほど水族館のシーンは多くなくガッカリしたのですが、(映画は面白かったです)

「アニメの聖地巡礼で水族館に行く人っているよな」

ということを思い出しました。

多くの人が水族館を訪れ、楽しみ方は人それぞれありますが、水族館という場所に来たいから来るという思いはほとんどの人に共通していることでしょう。

一方、アニメの聖地巡礼として水族館に来る人は、水族館だから来るのではありません。

「アニメの聖地だから来る」

のです。

当たり前のことなのですが、よく考えると水族館自体には特別な思いがない人が来るというのは結構面白くないですか?

デートにしろ、娯楽にしろ、聖地巡礼以外の人たちは「水族館という空間がデートに向いている」、「魚が見たい」などのような、水族館を構成する要素、あるいは水族館によって生み出されるものの何かしらに魅力を感じている訳です。

アニメの聖地巡礼を目的とした水族館の楽しみ方というのは比較的新しいものであると思うし、水族館の新たな客層かもしれないと思い、何回かに分けて、色々と考えたことをまとめておきたいと思います。

水族館が聖地になっているアニメって何がある?

まずは参考として水族館が聖地となっているアニメをできるだけ調べてみました。Twitterでも多くの人に協力していただきました。ありがとうございます。

その結果は以下のとおりです。

その他

結構あるもんですね。あわしまマリンパーク伊豆・三津シーパラダイスは「ラブライブ!サンシャイン!!」を全面的に押し出していますが、実は沼津港深海水族館も数秒だけ登場していました。あまりにも一瞬すぎるため、聖地巡礼にもあまり含まれていないようですが、水族館好きとしては外せません。

アニメの聖地巡礼について

聖地巡礼客について考える

次に、聖地巡礼をするのはどのような人たちなのかということについて考えていきたいと思います。

HMV&BOOKSのアニメに関する意識調査によると、

  1. アニメ好きの男女比は男性68%、女性32%
  2. アニメ好きの年齢構成は20代が34.5%で1位、30代が28.5%で2位
  3. 1ヶ月でアニメに費やす金額は、5000以下が64.6%、5000円〜10000円が21.1%
  4. アニメ付きが高じてついついやってしまうことは、寝不足28.7%、グッズ収集22.1%、真剣なアニメ討論12.0%、アニソン縛りのカラオケ11.2%、同じ作品を最新フォーマットで買い替え8.0%、ブログやTwitterで情報発信5.5%、その他5.4%、二次創作4.8%、ライブで異常に興奮2.3% 

まず1についてですが、一般的にアニメ好きは男性の方が多いようです。確かにあわしまマリンパークに行った時の印象では他の水族館と比べて男性客の割合が高いように感じました。時間帯や、聖地となっているアニメのジャンルにもよりますが、男女比から考えると、聖地巡礼客は男性の方が多くなりそうです。

次に2についてですが、アニメ好きは20代、30代が全体の半数以上を占めているようです。3位は40代、4位は10代なのですが、聖地巡礼にかかる金額や、使える時間のことを考えると主に20代が多くなりそうだと僕は思いました。

3については個人的に一番意外な結果でした。アニメ好きの方は結構な金額を使うというイメージだったのですが、全体の8割以上は1ヶ月にアニメに使う金額は10000円以下という結果になりました。聖地巡礼では交通費、現地での食事代、さらに宿泊ともなれば10000円はすぐに超えてしまいそうです。

最後に4についてです。アニメ好きが高じてついついやってしまうことでは、主要なものに聖地巡礼が含まれていないという結果でした。その他に含まれているとしても全体の5%もないということになりそうです。

 

これらの結果から、水族館に聖地巡礼にくる客層は

  1. 男性
  2. 主に20代
  3. アニメ好きの中でもかなり少数派?

なのではないかというのが僕の仮説です。

聖地巡礼客の特徴は?

次は僕の考えではなく、論文から聖地巡礼客の特徴について考えていきます。

アニメの聖地巡礼は意外と多くの論文があり、町おこしや観光振興の点からも関心が高いようです。(余談ですが、「聖地巡礼」という言葉は宗教的な意味を想起させるという点から「舞台探訪」という呼び方を好むファンも多いということも知りました。)

岡本(2009)によると、アニメ聖地巡礼者の特徴は、

  1. アニメ聖地巡礼者は、アニメで用いられた風景を撮影し、情報をホームページで発信すること。
  2. アニメ聖地巡礼者は、ノートへの書き込みや絵馬など、地域に何か巡礼の記念物を残し、それがさらに観光資源となって人を呼んでいること。
  3. 旅行動機はアニメの舞台を訪れることであるが、現地の人やファン同士の交流を楽しむことがあること。
  4. アニメ聖地巡礼者の中には、高頻度で当該地を訪れるリピーターがいること。また、遠方からもアニメ聖地巡礼に訪れる者もいること
  5. アニメ聖地巡礼者には「旅行情報化世代」が多いこと。

となるそうです。

2009年のものなので、現代に当てはめて考え直すと、情報の発信がホームページではなくSNSが多くなったということ以外では 十分今でも当てはまることだと思います。(ちなみにTwitterは2008年に日本語版が使えるようになり、2009年に携帯電話向けサイトが開設されたそうです)

自分の仮説と論文の特徴を見比べて

自分の仮説を見比べてみても、それほど大きな違いはなかったように感じます。 仮説を立てた時点では3つ目の少数派というものが気になっていた(あまりに聖地巡礼をする人が少ないとそもそも町おこしなどは成り立たないのでは?)のですが、リピーターもいるということから納得がいきました。

アニメ好きの方などからは

「こんな当たり前のことしか書いていないのか」

と思われそうな記事ですが、アニメをよく知らない僕自身がまず、アニメ・アニメ好きについて知るという点から今回はこのような内容になりました。あまり水族館の話もなかったような気がしますが、今後の考察の導入部分として考えてもらえるとありがたいです。

次回の記事では今回の考察をもとに水族館と聖地巡礼に関することをもっと掘り下げる予定です。まだまだ書きたいことがたくさんありますが、文字数が結構ありそうなので、ここで一旦区切りとさせていただきます。

 

参考文献

岡本健 「アニメ聖地巡礼の誕生と展開」『CATS叢書:観光学高等研究センター』北海道大学観光学高等研究センター, 2009年,p.49