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聖地巡礼客は水族館の新たな客層となりえるか

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aquarium-addict.hatenablog.com

の続きです。

聖地巡礼と水族館

聖地巡礼客の影響は?

前回は、水族館が聖地となっているアニメ、そして、聖地巡礼客の特徴について記述しました。今回の記事ではアニメの聖地巡礼と水族館の関係、そして、聖地巡礼客は水族館の新たな客層になりえるのかについて考えていきたいと思います。 

まず、水族館と聖地巡礼に関してです。

一言で聖地巡礼といってもその重要度はそれぞれ異なります。例えば、水族館がその物語において重要な場面や設定となっているのか、もしくはただ立ち寄っただけなのか、みたいな感じです。

この場合明らかに、前者の方が聖地としての重要度は高いように感じます。

そうなると前回リストアップした水族館が聖地となっているものにも聖地としての重要度の違いがあるのでしょう。水族館に影響を与えるならば、その水族館は聖地としてかなり重要度が高いものではなければいけません。

また、水族館側の意識も大事な要素だと思います。沼津の水族館やアクアワールド大洗は積極的にコラボをしているようですが、他の水族館はあまりそのようなことはないように思われます。東京の水族館はそれぞれ何回も訪問していますが、水族館がアニメの聖地として推しているようなものではなかったです。

なぜ水族館は積極的にアニメの聖地として推さないのか

アニメの聖地としての認知度が高まれば聖地巡礼としてお客さんをある程度は呼び込むことができるでしょう。しかし、どうして水族館が自らをアニメの聖地として宣伝することが少ないのでしょうか。

個人的には以下の3つの理由があると考えました。

  1. そもそも宣伝する必要がない
  2. アニメの聖地になることへの抵抗
  3. 水族館が聖地なだけでは弱すぎる

まず1についてです。水族館という施設は人気の施設として一般的に認知されています。土日やゴールデンウィーク、夏休みなどはものすごく混雑します。さらに、今回調べたアニメの聖地となっている水族館は、主に関東や都市にあるものが多く、人気の水族館がほとんどです。

そのため、そもそもアニメの人気に乗っからなくても十分に人が来るのではないか、ということです。

次に2についてです。今やアニメはオタクではない人や大人も多く見るようになりその偏見は昔と比べてだいぶなくなりました。しかし、イメージを重視する水族館では、まだ、アニメの聖地として売り出すことに抵抗があるのでは?というのは二つ目の考えです。

例えばデートスポットとして人気のアクアパーク品川はデートスポットという「イメージ」が集客に大きな影響を及ぼしていることでしょう。もしも、アニメの聖地というイメージが定着してしまったら、水族館のコンセプトとして問題があるかもしれません。

最後に3についてです。今回調べた中で、水族館が積極的にアニメの聖地としての宣伝を行い、それが集客に影響を与えることに成功していると感じたのは、あわしまマリンパーク伊豆・三津シーパラダイス、アクアワールド茨城県大洗水族館の3館でした。もちろんその水族館の努力や、アニメの人気なども関係あると思うのですが、一番大きいのは水族館だけでなく、その地域全体がアニメを用いた町おこしをしているということです。

僕のような水族館マニアにとって水族館というものは特別な存在であり、水族館という施設であればどんな僻地でも行ってやるという覚悟のようなものがありますが、一般の人にとって水族館というのはそこまで苦労して行くところではありません。一般の人にとって水族館のイメージは地元で一番近い水族館、あるいは幼少期に行った思い出の水族館だというのがほとんどだと思います。それはアニメの聖地巡礼をする方も同じでしょう。聖地巡礼にはお金もかかるので、いくらアニメの聖地となっているといっても熱狂的なファンでない限りわざわざその水族館のためだけに行くというわけではないのだと思います。

しかし、その地域全体が聖地となっているのならばその抵抗感もだいぶ軽減されるのではないのでしょうか。もっと別の重要な聖地がありそのついでとして水族館にも行く、あるいは泊まりで聖地巡礼に行き、余った時間で水族館にも行くなど、水族館だけを目的地として他県から訪れるよりも行きやすくなると思います。

聖地巡礼客は水族館の新たな客層となりえるか

全てがうまくいくとは限らない

以上のことを考えると、聖地巡礼客は水族館の新たな客層になる可能性はあるが、その状況を作り出すのは難しく、聖地として宣伝したところでうまくいくとは限らないのではないか、というのが僕の個人的な結論です。正直アニメや聖地巡礼をする人について調べる前は、みんな熱狂的でたくさんの人が聖地巡礼をするものだと思っていましたが、調べていくうちにそのような人は決して多数派ではなく、多くの人が節度を持って趣味として楽しんでいるということが分かりました。オタクは何をしても来るというわけではないのです。

その一方で、もしかすると聖地となることでより集客が望めるかもしれない条件のようなものも考えることができました。

水族館が聖地となることで成功する条件
  1. その地域全体がアニメの聖地、あるいはアニメで町おこしをしている
  2. 都市部の水族館ではない(宣伝の必要性の問題)、しかし、都市部からのアクセスがいい(あまりに遠いと一般の人は水族館のために行こうと思えない)
  3. アニメにおいて重要な聖地であること(登場人物が修学旅行や観光で来る、では少し重要度が低い)

聖地となることで新たな客層を獲得できたと思われる水族館の特徴から、上記の条件を満たすことが成功のポイントなのではないかと僕は考えました。見ての通り、水族館だけでどうにかできる問題ではなく、アニメの制作やその地域の町おこしとしての方針など多くの要素が絡む、難しい条件だということが分かります。これらを満たすのはなかなか厳しいことであると思うし、そのアニメが聖地巡礼をするファンを獲得できるほどの人気が出る保証もありません。水族館がアニメの聖地となることで、聖地巡礼客を獲得するためにはある程度の「運」も必要なのかもしれません。

最後に

新たな水族館の楽しみ方、そして、水族館の新たな客層に聖地巡礼客はなりえるかということで二つの記事で考察してきましたが、聖地となることで成功することはなかなか難しいという結論に至りました。しかし、それが無駄であるというわけではありません。今回、僕はこの疑問からアニメに興味を持つようになりました。

「このアニメにはあの水族館が出てくるのか、見てみよう」

とかなりイレギュラーなものでしたが、今では普通にアニメを見ることが毎日の楽しみになっています。同じように、アニメをきっかけとして水族館に来た人も必ずいるはずです。たとえそれが、水族館に影響を与えるほどの人数でなくても、「水族館自体に興味のない人が水族館に来るようになる」ということはとても価値があることだと思います。

僕は水族館の関係者ではないので、こんなことをじっくりと考える必要はないし、僕が考えたことで何かが変わるというわけでもありません。しかし、自分が大好きな水族館の魅力に気が付く人が増えるかもしれないということが純粋に嬉しかったのです。水族館に限りませんが、よく「マニアに人気」という謳い文句で宣伝されるものってありますよね。僕はいつも「それって当たり前のことなんじゃないの、だってマニアなんだもん」と思ってしまいます。むしろ、一般人に人気がないことをその言葉に逃げているようにも感じてしまいます。もちろん、多くの人が好むもの、一般受けするものがいいものとは限りません。でも残念なのが「マニアに人気」というものはほとんどの場合、素晴らしいものであることが多いということです。

良いものなのにどうして評価されないのか、それこそ僕は良い悪い以前にそれに触れるきっかけがないのではないかと考えていました。例えば、水族館の解説パネルも書いてある内容は素晴らしいものがほとんどです。しかし、読んでもらえなければそれは、ただの「モノ」です。興味を持って読んでもらえなければそもそもの機能すらも果たすことができません。内容と同じかそれ以上に、どうしたら読むきっかけを与えられるのか、ということを考えることは大切なことなのではないでしょうか。

その点、アニメはきっかけとして非常に優秀なものだと思います。幅広い年代、そして日本だけでなく世界中の人が見るアニメの影響はものすごいものです。実際に、沼津では日本人だけではなく、中国人や韓国人の方までもが聖地巡礼に訪れているそうです。 

僕が大好きな水族館。その魅力に気が付くきっかけは多ければ多いほどいいのです。

(この記事を公開しようとしていた少し前に、同じく水族館ブログを書かれている銀鏡つかささんの記事が投稿されました。解説パネルの部分など僕と同じ意見の記事であったので、水族館の情報を発信している他の人も同じ考えだということが分かり、とても嬉しかったです。)